ドイツのクリスマス市
ドイツのクリスマスは、12月24日〜26日の3日間です。祝日でもあり、日本の年末年始のようなイメージです。家族・親戚で集まってお食事やプレゼントを交換したり、教会へ行ったり、散歩をしたり、お菓子と共にカフェタイムをしたり、と思い思いに過ごします。
人々の楽しみはクリスマスの3日間だけでなく、それよりも前から始まっています。11月の終わり頃からクリスマス前の約4週間はアドヴェント(イエス・キリストの降誕を待ち望む期間のことであり、日本語では待降節といいます)と呼ばれ、クリスマスを楽しみにしながら日々を過ごすのです。お家でクリスマスツリーを飾り、手作りクッキーをたくさん焼いて親しい人にプレゼントをする人もいます。
また、クリスマスまでの毎日、日付が書かれた扉を開いてそこに入っているお菓子を楽しみ、クリスマス当日を迎えるというアドヴェントカレンダーなどもあります。ドイツの大きな都市では毎日(小さな町では数日間)クリスマスマーケットが開催されますので、ここではグリューワイン(スパイス入りのホットワイン)を飲んだり、美味しいものを食べたり、マーケットでショッピングをして、クリスマスの雰囲気を満喫することができます。この時期はお店のショーウィンドウもクリスマスデコレーションで飾られて、1年でもっとも華やかな雰囲気になります。
クリスマス市にも焼き菓子が
たくさん販売されています
お菓子屋さんでは、シュトレン作りの準備が10月の終わり頃から始まります。ドイツのクリスマス菓子といえばシュトレンが有名ですが、その他にもいろいろな種類のクリスマスクッキーの詰め合わせやレープクーヘンなどのスパイス系のクリスマス菓子が作られ、お菓子のバリエーションがだんだんと増えていきます。この時期に厨房でクリスマス菓子特有のスパイスの香りが漂ってくると、忙しいながらもなんだかわくわくするような嬉しい気持ちになったものです。
少しずつクリスマス菓子が店頭に並んでいき、人々はクリスマスを心待ちにしながらそれらを楽しむのです。例えば、アドヴェント期間の毎日曜日には、アドヴェントリースのろうそくに火をともして、日を置くごとに味わいが変わってくるシュトレンを少しずつスライスして楽しんだりもします。ドイツでは、シュトレンをクリスマス当日だけに食べるというよりは、その前後でも好きな時にゆっくりと味わうという人が多いようです。クリスマス当日のお菓子屋さんでは、シュトレンだけではなくクリスマス用にデコレーションされたバターケーキやバウムクーヘン、クッキー、チョコレートなども人気が高かった記憶があります。
一年で一番大切なクリスマスの祝日を、好きなスイーツとともに笑顔で過ごせるのは幸せなひとときとなることでしょう!
ドイツの代表的なクリスマス菓子といえば、シュトレンが有名です。
シュトレンは発酵生地に、ドライフルーツやナッツ、スパイスなどを合わせて焼き上げて、表面にバターをたっぷりとしみこませ、最後に粉糖で飾りつけをする発酵菓子です。形は中央部が膨らんだ楕円形で、周囲が粉糖で包まれており、生まれたてのキリストがおくるみに包まれている姿を模したといわれています。
その由来から、Nではキリストを意味するChrist(クリスト)をシュトレンの前に入れたChriststollen(クリストシュトレン)という呼び方を選んでいます。ドイツでは“クリストシュトレン”、“シュトレン”のどちらの呼び方も使われています。
Nのクリストシュトレンは、私が働いていたフランクフルト近郊のお菓子屋さんのシュトレン配合を参考に作っています。お店でのシュトレン作りで印象に残っている場面は、仕込み&窯チームにいたときのこと。
シュトレンが焼きあがるのをオーブン前で待ち構え、焼きたてを熱い熱いと言いながらたっぷりの溶かしバターに漬けていました。大きなシュトレン型で重さもかなりあるので、私が窯出しをすることはなかったのですが(落としたら大変なので...)ワクワクしながら一緒に構えて見守りつつ、砂糖まぶしをやらせてもらっていました。シュトレンに触らせてもらえるだけでとっても嬉しく、楽しかったという記憶があります。そんな楽しい思い出のシュトレンを参考にさせてもらっているのですが、ドイツと日本では原材料や環境(気候)が違い、味の好みや感じ方も異なっています。それらを踏まえたうえで、本場のシュトレンの基本ベースは守りながらも微調整したレシピでクリストシュトレンを作っています。
一番のこだわりはスパイス。
ドイツのクリスマス菓子にはスパイスが欠かせません。シュトレン用のスパイスミックスはお店の秘密配合です。ですので、ドイツにいた頃は、いろいろなお店のシュトレンを食べ比べてスパイス配合を想像するのが楽しみでした。
Nでは、シュトレンに合う8種類のスパイスを組み合わせたオリジナルのシュトレンスパイスを作っています。スパイスは人によって好みがありますので、主張しすぎずに味のエッセンスとなるように、また日本人の好みに合うように調整しています。
生地に合わせるフルーツ・ナッツには、サルタナレーズン・オレンジピール・シトロンピール・アーモンドスリーバードを使用しています。サルタナレーズンは、明るい紫色のレーズンでやさしい甘みがあります。シトロンピールは、チェードロと呼ばれるレモンに似た柑橘を砂糖漬けにしたもので、色は黄緑がかっていて、爽やかな酸味とほのかな苦みが特徴です。アーモンドスリーバードは、アーモンドの皮をむき、薄く細切りにしたものです。大きすぎず細かすぎず、かんだ時の食感がちょうど良いアーモンドです。ベースとなる素材の小麦粉は、ドイツのものと近い小麦粉を選んでやや重めの食感にしています。生地にたっぷりしみこませて味の要となるバターには、北海道のよつ葉バターを使っています。これらの美味しくて贅沢な素材をクリストシュトレン作りに使わせてもらい、皆さまにお届けしております。
アドヴェントの時期になるとクリストシュトレンの他にもたくさんのクリスマス菓子が店頭に並びます。
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クリストシュトレン
Christstollen
レーズンなどのドライフルーツがたっぷり入ったドイツの代表的なクリスマス発酵菓子
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モーンシュトレン
Mohnstollen
プチプチとした食感のモーンフィリングをアーモンドと柑橘ピール入りの生地で巻き込んだシュトレン
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ヌスシュトレン
Nussstollen
ヘーゼルナッツフィリングをアーモンドと柑橘ピール入りの生地で巻き込んだシュトレン
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マンデルシュトレン
Mandelstollen
マジパンローマッセ(アーモンドペースト)とアーモンドのフィリングを柑橘ピール入りの生地で巻き込んだシュトレン
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エリーゼンレープクーヘン
Elisenlebkuchen
厚めのオブラートにナッツとメレンゲ生地をのせて焼いたしっとり食感の菓子
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ホーニッヒレープクーヘン
Honiglebkuchen
クリスマススパイスが効いた蜂蜜たっぷりのライ麦粉入りの生地で作るクッキー
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ヘクセンハウス
Hexenhaus
ホーニッヒレープクーヘン生地で作るお菓子の家
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リグニッツァーボンベン
Liegnitzer Bomben
ドイツのLiginitz(リグニッツ)の伝統菓子
ホーニッヒレープクーヘン生地にジャムを塗り、フルーツ・ナッツを巻きこんだものをカットして焼き上げ、チョコレートで仕上げた菓子
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ザンクトガレナービベーレ
St.Gallener Biberle
スイスのSt.Gallen(サンクトガレン)の伝統菓子
ホーニッヒレープクーヘン生地にマジパンフィリングを包んだ小菓子
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バースラーレッカリ
Basler Läckerli
スイスのBasel(バーゼル)の伝統菓子
ホーニッヒレープクーヘンの生地にアーモンドやピールを加えて、薄く延ばして焼き上げ、四角くカットした菓子
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ココスマクローネン
Kokosmakronen
ココナッツたっぷりのさっくりメレンゲ小菓子
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ツィムトシュテルネ
Zimtsterne
シナモン入りのナッツ生地にメレンゲを塗って、星形で抜いて焼き上げた菓子